2006凱旋門賞ディープインパクトの敗因について徹底考察

昨日は様々なメディアでディープインパクトの敗因について取上げられました。そんな中広く深く分析されているのはこの記事ではないでしょうか(リンクの有効期限が過ぎました)。
多分日本中の人が考えた敗因はこの記事に集約されているはずです。でも私の見解は大きく異なりますので、この記事と比較して詳しく解説させていただければと思います。

1番「好スタートが仇」

何度も当ブログで触れてきたようにディープインパクトは馬群の中で競馬をすることはできません。好スタートを切ると他の馬に囲まれ菊花賞みたいに折り合いを欠くことになるのです。ただ武豊もそのくらいのことは分かっているので、昨日のレースも包まれる前に外にきちんと出しました。そういった意味では無理矢理出遅れるよりかはスムーズな競馬が出来たといえます。この記事に書かれている「本来と違う競馬になったので戸惑った」というのは多分間違いですが(ディープがきちんとゲートを出たレースはいくつもあるので)、「目標にされたのが痛かった」ということについては後に述べたいと思います。

2番「精神面のゆらぎ」
これについては私では分かりません。ただ精神面に関連して気になったのは武豊の仕掛けのタイミングです。多分武豊はできるだけ仕掛けを遅らせたかったと思います。ところが外からレイルリンクが来てしまったので、仕掛けざるを得ませんでした。そうは言ってもディープは実際の競馬で併せ馬をしたことがないです。そしてあのタイミングで追った結果内に逃げる形となりレイルリンクに競り負けることになりました。そういった意味で目標にされたのは痛かったという理論は成り立つかもしれません。

3番「遅すぎたペース」
勝ちタイムが2分31秒台超スローペースで「ディープには慣れていない」というのですが、これは明らかな間違いです。録画したテレビ放送を見て手元の時計でゲートが開いてからゴールまでのラップタイムを実測してみました。

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結果は最初の1Fが12秒台後半で以降は最後の1Fまで12秒前半のラップタイムを刻みました。そう実測走破タイムは2分25秒台なのです。ご存知の通りJRAの公式タイム計測もゲートが開いてからゴール版までのタイムを計測しているわけではないですが、実測タイムと公式タイムが6秒も違うのは不思議です。

4番 「柔らかい馬場」
ぶっちゃげ他の敗因はオマケみたいなものでこれがメインであることは競馬に詳しい人なら分かっていると思います。武豊は「ギアが入らなかった」と言ってましたが、この深い芝なら当たり前です。この深い芝のおかげでディープインパクトのトップスピードが殺されたのです。ディープインパクトがF1マシンならヨーロッパの馬はWRCで使われるラリーカーなのです。日本の芝のようなターマック的な路面(舗装路)まらF1マシンの方が早いのですが、それに対してヨーロッパの芝はグラベル(悪路)なのでWRCカーの方が早いのです。それはいくらF1マシンの方がエンジン性能がよくても、路面を捉えるタイヤが舗装路用である限りエンジンパワーがスピードにつながらないのです。

5番「長いレース間隔」
ディープがもし勝てていたら過去の凱旋門賞を勝った馬の中で最も長いブランクだったそうで、裏を返せばステップレースを使うべきだったという意見です。この意見にはいくつか疑問が残ります。何故ならディープインパクトは間隔を詰めて使われた経験がないからです。他の馬がステップアップレースに選んだフォア賞を使うと凱旋門賞までの間隔が短すぎると思います。休み明けでもきちんと圧勝していることからも、今回のローテーションの方がよかったと思います。ただエルコンドルパサーみたいにもっと早く来てイスバーン賞あたりを使っていればよい結果が出たかもしれません。

6番「斤量差の問題」
これは上の記事には書いていませんが、これについても触れておかないといけません。凱旋門賞は近年3歳馬の天下ということは周知の事実です。日本では3歳馬と古馬との斤量差は2キロと設定されていますが、凱旋門賞は3.5KGの差があります。「凱旋門賞は斤量が軽い3歳馬から買うのが基本」ですが、斤量が競馬にどれほど影響しているのかは定かではありません。この1.5KGが何を意味していたのでしょうか。

参考にはならないのですが、日本のGTカーレースではウエイトハンデ制度というのがあります。ドライバーの話によると10KG、20KGは問題ないが、30KG以上積むと明らかにスピードが鈍くなるそうです。ちなみにGTカーの重さは競走馬の2倍もありません。少なくとも1.5KGのウエイトハンデ増がディープインパクトの全ての敗因であるとは考えない方がよいでしょう。

しかし、近年の3歳馬の勝率が8割以上というデータもさることながら、凱旋門賞を勝った3歳馬が翌年出てもきっちり着順を下げているということから、3歳馬有利というのには間違いないと思います。あと考えられるとしたらヨーロッパの馬は3歳秋がピークとなる馬が多いのかもしれません。今回勝ったレイルリンクはデインヒルの孫にあたります。デインヒルは昨年ヨーロッパのリーディング種牡馬となりました。デインヒルの代表産駒はファインモーション、エアエミネム、ゼネラリストと3歳の夏前後がピークだったような気がします。

斤量の件は自分の中ではまだまだ研究足りてなくすぐには結論が出せません。

芝の問題と仕掛けの問題について更に深く

まず凱旋門賞で使われている芝は何故ディープインパクトに合わないかということを自分なりの見解を述べさせていただきたいと思います。ロンシャン競馬場の芝を完全に把握しているわけではないのですが、日本の馬場よりクッション性が高いことは間違いありません。これは人間が走るとしたら日本の芝は陸上競技場、ロンシャン競馬場の芝は砂浜と例えられます。陸上競技場の場合、下地が硬いので、足で地面を蹴りこんだら、そのままの力が反作用の力となり前に進みますが、砂浜で走る場合、蹴りこんだ力がクッション作用により吸収され前に進む力が得られません。そこで砂浜でスピードを上げるためには脚を高く上げ、ピッチ走法に切り替える必要があります。ちなみにこの走り方はあのレースでいえば最後方から追い上げたプライドの走り方が典型的でしょう。一方でディープインパクトは重心が低く、ストライド走法ですので全く正反対なのです。だから武豊がディープインパクトをトップギアに状態に入れようとも全くスピードが乗らないのです。

仕掛けの問題

「プライドとレイルリングがディープに勝てたのはディープインパクトがバテたからで、武豊が仕掛けを遅らせれば結果が変わっていたのでは?」というマスコミやネットで多く飛び交う意見を違います。その理由を「馬がバテる」という話で説明します。馬がバテるというのは以下の3通りに分けられると思います。

1、心肺機能の限界
2、脚の限界
3、精神面の限界

1、心肺機能の限界
私がよくガソリン切れという表現を使いますが、これに当たります。心肺機能の限界は日本のダート競馬でよく見られるケースです。ダートの1200mの競馬で最初の3Fを34秒で走る馬は沢山いますが上がり3Fを34秒で上がってくる馬はほとんどいないと思います。同様にダートの1800でも最初の3Fを35秒で走る馬は結構いますが、最後の3Fを35秒で走る馬はほとんどいません。逆に日本の芝のレースでは心肺機能が限界に到達するようなレースが少ないので、上がり3Fを33秒台で帰ってくる馬が多くいるのです。

2、脚の限界

これは京都の芝外回りで顕著に見られる傾向です。京都競馬場外回りは3コーナーのてっぺんからの下り坂にかかる地点が残り約800Mとなります。残り800と言えば大半の競馬場では徐々にスピードを上げていく仕掛けどころですが、京都外回りではここで仕掛けると最後の直線で必ず失速します。それは人間でも坂道を全力で下ると脚が動かなくなるのと一緒です。実際にほとんどの騎手は3コーナーの下り坂の手前で手綱を引いていると思います。春の天皇賞でディープインパクトが3コーナー手前で上がっていった時も、坂の頂上では一旦武豊は手綱を引いてブレーキをかけました。

また、脚の限界が来る馬はピッチ走法の馬が多いと思います。それは他の馬よりも脚を多く回転させているからです。

3、精神面の限界

併せ馬に競り負けた時に馬が走る気を無くしてしまうことがよくあると思いますがそれのことです。これはディープインパクトが勝ったレースで2着・3着に入った馬がどのような競馬をしていたかを見てくれれば分かりやすいと思います。ディープインパクトが仕掛けた時に付いて行った馬はそのスピードに付いて行けず走る気を失います。また、先行馬もディープに横から交わされた時点で競走をあきらめます。結果2着3着に来る馬はディープインパクトよりワンテンポ仕掛けを遅らせる馬、もしくはディープインパクトに最後に交わされる逃げ馬となるわけです。
以上バテるについての概念を説明しました。

ディープインパクトはどうバテたのか?それは鞍上の武豊とディープインパク自身がよく分かっていると思います。しかし前者は真相を口にしないと思いますし、後者は口すら訊けません。私が推測するにクッションの訊いてなおかつディープインパクトなら「2、脚の限界」はないと思います。

「1、心肺機能の限界」については、限界点には到達していたが、失速するほどでもなかったと思います。これはこのレースの最後の1Fは12秒後半かかっていますが、完全なガソリン切れを起こせば日本のダート競馬と同様に13秒以上かかるはずです。そもそもそのような質のレースなら8頭中最初に騎手の手が動いたレイルリンクが勝つことは普通無いと思います。

やはり「3番、精神面の限界」がこのレースのポイントだったと思います。レイルリンクに外から交わされた時点で精神面でバテてしまったはずです。つまり仕掛けを遅らせるほどレイルリンクに交わされるのが早くなるわけです。

どういう騎乗をすれば勝てたのか

ここまで長々と話を述べてきましたが、ではディープインパクトはどうすれば勝てたのでしょうか?
それはやはりフォルスストレートでの捲りしか無かったと思います。
つまりロンシャン競馬場の馬場ではディープインパクトのトップスピードが完全に殺されるわけですから、豊富なガソリン量で勝負しなければならなかったのです。つまり天皇賞春の競馬のように直線入り口までに全開走行に持って行き最後の直線をを死ぬ気で凌ぐというやりかたです。もちろんそんな早仕掛けではバテテしまい3着どころか最下位に落ちる可能性も十分あります。しかし、僅かな可能性にかけるべきではなかったのでしょうか。ロンシャン競馬場に適正のないディープインパクトが欧州最強クラスの馬を正攻法で倒すのは難しいという認識が関係者いや、日本のマスコミにあれば少しは違っていたかもしれませんね。

適正の無い条件で勝てるほど競馬は甘くないことを競馬関係者は今回のレースで学んだと思います。ディープインパクトに昨日の凱旋門賞を勝てというのは、スプリンターズSに出て勝てというのと、ばんえい競馬に出て勝てというのとあまり変わらないのかもしれません。本来、調教師というのは馬の本質を見極め、適正のあるレースを選んで出走させる必要があります。

しかし、適正の無いところに馬を持っていた池江調教師を攻めるつもりは全くありません。何故ならディープインパクトだからです。ディープインパクトはこれまで日本競馬の常識を変えてきたと言っていいほど強い馬です。私も正直「ひょっとしたらディープインパクトなら・・・」と思う部分もありました。

今後はディープインパクトに世界的なレースを勝ってほしいのは私の素直な気持です。凱旋門賞と同レベルのレースでディープインパクトの適正が高いのはズバリ「ドバイワールドカップ」だと思います。それは過去のレースを見るとダートにも関わらず日本の芝馬みたいな脚の上げ方をする馬が勝っているからです。ディープインパクトにとってはスパイク適正が問題となりますが、ロンシャンよりはるかに適正があるはずです。ただ今年行っておけば相手はエレクトロキューショニストで済んだのですが、来年の一番人気は多分ディスクリートキャットでしょうね。UAEダービーを見る限り、あの馬はディープインパクト級の化け物でしょう。

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4 Responses to “2006凱旋門賞ディープインパクトの敗因について徹底考察”

  1. ひげさん より:

    2歳G1勝って皐月賞勝ったら、凱旋門狙うようにしたら日本馬でも勝てると思います。

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  2. oyajito より:

    ひげ様・訪問コメントありがとうございます。正直、凱旋門賞の適正があり更に勝てる可能性のあるレベルの馬は日本にも何頭かいると思います。具体的にはコスモバルク、フラムドパシオン、バランスオブゲーム、アジュディミツオー、メイショウサムソンといった上がり3Fが36秒かかる競馬で強い馬です。

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  3. 信参 より:

    早速タイム修正出てましたね。昨日の今日でよく分析されてるなぁと感心しました。

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  4. oyajito より:

    信参様訪問・コメントありがとうございます。勝ちタイムは訂正されたようですね。あのレースは逃げた馬が結構飛ばしていて、息を抜けるようなシーンが無かったにも関わらず、近年稀にみるスローペースという報道があったから疑問に思い自分で測ってみました。海外競馬の公式タイムがここまで適当だったとは。昔からJCでも速い時計を経験した外国馬が来る傾向があったので、外国馬の近走走破タイムを予想のファクターの一つに入れていました。結果そこそこ美味しい馬券も取れたこともありましたが、たまたまだったのかもしれません。

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